2010年05月21日

介護する側を守る法とシステムの確立を(医療介護CBニュース)

【第105回】湯原悦子さん(日本福祉大社会福祉学科教授)

 過去12年間に発生した「介護殺人」は454件。つまり、この国では、介護者が要介護者を殺す事件が、月に3件程度は発生している-。日本福祉大の湯原悦子准教授の調査で明らかになった現実である。高齢化が進行する中、この痛まし過ぎる現実を解決するすべはあるのか。「まずは、介護する側を守る法とシステムの確立が不可欠」と訴える湯原准教授に話を聞いた。【多●正芳】
(【編注】●は木へんに朶)

【複数の写真、図表の入った記事詳細】


―12年間に454件もの介護殺人が発生しているとは、想像以上の数でした。

残念ながら、その数ですらも氷山の一角にすぎません。

―どういうことでしょうか。

 今回、発表した数字は、新聞報道された事件のうち「被害者は60歳以上。介護が原因で家族や親族によって引き起こされた殺人や心中」だけを集計したものです。しかも心中については、遺書やメモなどで介護が背景にあるとはっきりしたものだけをカウントしました。理由がよく分からない心中も少なくありませんから、現実の介護殺人はもっと多いはずです。

―2000年には介護保険が導入されています。この保険は、介護殺人の発生状況に変化をもたらしているでしょうか。

 一時的に減った時期はありますが、最近4年間だけで見ると、年間40-50件もの殺人が発生しています。介護保険が導入されたからといって、介護殺人が減っているわけではないと言えるでしょう。

―介護殺人の特徴について教えてください。

 特徴の一つは、半分以上が心中目的であることです。これは、10年以上前から変わりません。また、加害者と被害者の立場で見れば、「息子が親」を殺すパターンと、「夫が妻」を殺すパターンが多いですね。最近はどちらかというと、「夫が妻」を殺すパターンの増加が目に付きます。
 男性が加害者となるケースが圧倒的に多いのも特徴です。事実、454件の7割余りは、男性が加害者でした。虐待にしても、かつてはお嫁さんが義理の父母への加害者となるパターンが多かったのですが、今では息子が実の父母を虐待するケースの方が目立ちます。

―なぜ男性の介護者は、殺人や虐待の加害者になりやすいのでしょうか。

 男性の場合、介護だけでなく家事でも行き詰まる人が多いからでしょう。例えば、ほとんどすべての女性は、スーパーマーケットでの買い物を苦痛と感じることはありません。ところが、男性は違います。特に現役時代、一定の社会的地位にあった人は、「スーパーで買い物かごを提げた自分」に、たまらないほどのみじめさを感じることもあるようです。

 また、比較的高齢の男性では、悩みを他人に相談したり、愚痴をこぼしたりすることを潔しとせず、黙々と介護に取り組む人を多く見掛けます。ちょっとしたことでも友人としゃべり合い、不安や悩みの“重さ”を分かち合う女性とは、まるで違います。このあたりにも、男性が加害者になってしまう原因があると思われます。
 「悩みを打ち明けるか、自分の胸にしまっておくか」など、単に生き方の相違で、殺人や虐待を引き起こすような問題ではないと思う方がいるかもしれません。しかし、誰とも悩みや不安を共有せず、一人で頑張り続ける時間が1年、2年、3年…と続いていくとしたら、どうでしょう。どんなに心が強い人でも、心身共に疲労困憊して、うつ状態になり、将来に希望を見いだせなくなるのではないでしょうか。

―すると、虐待や殺人に走りやすいのは「妻の介護を手掛ける夫」ということでしょうか。

 確かに「夫が妻」を殺してしまう例は増えています。しかし、それより深刻な問題が発生しやすいケースがあります。「無職の息子が母親を介護する」ケースです。特に、その息子が引きこもりがちだったりすると危険です。こうした男性のほとんどは、介護に関する知識がない上、他の人に助けを求めることが苦手だからです。
 例えば08年7月には、引きこもりの男性が介護を必要する母親の面倒を見きれず、絞殺する事件も発生しましたが、この母親は、ほとんど介護を受けていませんでした。殺される直前などは、ほとんど食事を口にしていない状態でした。

―介護殺人や虐待を防ぐには、どうしたらよいでしょうか。

 殺人にしろ、虐待にしろ、その兆候となる言動をキャッチすることが発生防止のカギとなります。だからケアマネはもちろん、家族や親せきも、最悪の事態もあり得ることを心に留め、介護者が頑張り過ぎていないか、うつ状態になっていないかなどに注意を払うことが必要です。

―しかし、家族やケアマネの注意力に頼るだけの対策では限界があります。法や制度の改革で、問題を根本的に解決することはできないでしょうか。

 まずやるべきは、介護者の権利擁護の根拠となる「介護者法」を制定することでしょう。英国などでは施行されている法律ですが、その理念は「介護役割を引き受けることによって、社会的に孤立したり、余暇が楽しめなくなったり、就労の機会が奪われたりしてはならない」です。
 日本の社会では、自らの生活や権利を抑制してでも介護を全うすべき、という雰囲気があるように思えてなりません。その結果、心身共に疲れ果てた介護者が殺人や虐待を引き起こしているのではないでしょうか。そうした雰囲気を変えるためにも、介護者の権利を守る法律を制定することから始めるべきだと思うのです。近日中には、同様の志を持った識者や大学関係者が集まり、介護者の権利を守るための団体を立ち上げ、介護者法の確立に向け運動を進めていく予定です。

―しかし、法を作るだけでは、現実の問題は解決しないのではないでしょうか。

 もちろんです。介護者法の成立を目指すと同時に、介護者の心身の状況などを推し量るアセスメント作りにも取り組みたいと考えています。アセスメントについては、まだ検討を始めたばかりなので、多くは語れませんが、例えば「うつ状態」にあるかどうかの検査項目などは、ぜひ盛り込みたいですね。
いずれにせよ、このまま手をこまねいていては、介護殺人も虐待も減ることはありません。一刻も早く、介護者を守る法とシステムを整備する必要があります。


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posted by アリマ テツオ at 18:05| Comment(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント

うほほぉぉおぉおぉっ!!!!(*゚∀゚)=3
あの亀/頭吸いながら舌でなめ回すテク!マジでヤベェ!!
報/酬5マンもらえたし、さいっこぉの仕事見つけたぜぇぇぇ!!
http://speCover.com/topo/1w4wrsr/
Posted by なんじゃあのワザ!!! at 2010年05月22日 23:04
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